文学
さて、『夜は短し歩けよ乙女』を衝動買い・衝動読みしてしまったわけですが(三時間程度、目覚ましに読んだからといってなんのこれしき、浪人生になる覚悟の出来たわたしには無用な心配です)。
普段、ライトノベルなんかを読んでいると、文章というよりは全体の構成力に驚かされることが多いですね。
『キノの旅』時雨沢恵一さんのセンスのよさに感服したり、『バッカーノ!』『デュラララ!!』成田良悟さんの騙し絵のようなトリックにウキウキしたり、またもや『Missing』甲田学人さんの文章から漂う、言い様のない恐ろしさについ振り返って誰もいないか確認したり…というのはあっても、お気に入りの一文を見つけてつい書き留めるというようなことはあまりないわけです。
だからといって、わたしの好きな『人間失格』のような文体では、いかに表紙が『初恋マジカルブリッツ』『れでぃ・ばと!』みたいな、こういかにもモエモエした感じであってもなかなか…となる。
(関係のない話になりますが、最近は既製品のような萌えが氾濫しすぎです。
萌えは我々自身が発見するものであって、『これが萌えですよ』と言わんばかりに提供されるものではなく、また、オタクは密やかでいるべき人種だと思うのですが。
有名どころのアニメをちょっとかじったくらいで『俺オタクだからwww』とか言う人間は、まさに『恥を知れ!しかるのち死ね!』)
話が横道に逸れましたが、そんなわけで最近はなかなか『良書!』と思えるものに出会えていませんでした。
多いときには一週間で本が三冊増えるくらい、ジャンルを問わず読んでいるのですが。
しかしながらこれは良書でした。さすが山本周五郎賞。
繊細に張り巡らされた伏線が、少しずつ少しずつ回収されて、最後に素晴らしい竹細工のような作品になる印象を受けました。
いちいち言い回しにウィットが効いていて、好きな文章を挙げればきりがありませんね。
それと、一年前にこの本に出会っていたら、わたしはもっと一心不乱に勉強したかと思います。何故なら、主人公の『先輩』と『黒髪の乙女』の大学生活がとても楽しそうだったから笑
もう少しはやく出会いたかったなあと思います。
あらすじを申し上げますと、
黒髪の乙女に恋をした同じサークルの先輩である主人公は、『ナカメ作戦(なるべく彼女の目に止まる作戦)』を胸に抱き、あの手この手で彼女に近付こうとする。
だが、度重なる『偶然の出会い』にも彼女は『奇遇ですねえ!』というばかり。
彼女が呼び寄せる変人たち(酒豪のお姉さん、たかり屋の道化師、高利貸しの老人、etc…)も加わって、主人公の恋は実るのか否か。
このような中で、主人公はズボンとパンツを盗まれたり、謎の我慢比べに出されたり、学園祭の主役をぶんどったり、いろいろするのですが、それがいちいちオモチロオカシく(こんな表現が出てきます)良い作品でした。
しかし、ラノベを読むと『わたしに発想力さえあれば、すぐに書き上げるのに!ぐぬう!待っていろ角川書店!』と闘志をくすぐられますが、このような作品を読むと闘志も何も、『ああ、才能が欲しい…』と嘆息するのみです。
ああ、わたしに才能を与え給へ。
つくづく、なにか書きたいです…